佐藤優著「テロリズムの罠 左巻」
角川oneテーマ21、09年2月。
著者は新自由主義を、社会を弱め、国家を弱めるものとして
批判する。新自由主義はTerrorを誘発する。
著者は基本は右翼国家主義者。
ただし国家権力がむき出しになるのを避けるべき、との立場。
権力が隠された状態を優れたものとする著者は、
死刑は原則として廃止されるべきと主張する。
しかし著者が宮崎勤らの元死刑囚に「氏」をつけるのは変だ。
▼「小さな政府」は官僚の権力を強化し、
国家の暴力性を強化する。その点で
著者は「小さな政府」や新自由主義を批判する。
新自由主義は国家を煮詰めるものだ、とする。
煮詰め過ぎれば焦げつき、そして炎上する。国家を煮詰め
てはならず、さりとて水みたいな国家にしてはならず。
著者の見立てでは、新自由主義は原子論(atomism)の世界観
を採用する。原子論と個人主義(individualism)は、
語源をたどれば同じ概念である。
続き。
新自由主義や個人主義の対極にあるのは、
共産主義や共同体主義である。Soviet流共産主義(社会主義)
や農村共同体は、現在の人類の段階では機能し難い。
新自由主義と社会主義の中間を志向するべきだけど、
どのあたりが良いかは不透明。
第一次安倍内閣の崩壊に関して、
著者は新自由主義と保守主義の相克の問題を指摘する。
新自由主義は新保守主義とも呼ばれる。
本拠地のUSAでは新自由主義と保守主義との矛盾は無い。
日本では新自由主義と保守主義とは矛盾する。
小泉元総理が巧妙な演技で矛盾をごまかしたのに対して、
安倍第一次政権はそれに失敗した。