内田樹著「疲れすぎて眠れぬ夜のために」
角川文庫、07年9月。
著者は、近代人流の、
ひたすら向上心を持ち、努力する生き方に賛同せず。
物慾抑制をよしとする。
物慾制限のために、引越しを多くする。
引越しの際の面倒を小さくするために、
持ち物を減らし、身軽になる。
おとなは、自分の可能性の有限性を知り、
向上心過剰を避けるのがよろしい。
自分の限界を知らず、あれも出来る、
これも出来る、と慾張り、
過剰な努力をして、身体を壊すのは詰らず。
現在人は本当の利己主義を知らず、と著者は論評。
むかつきを解消する一瞬の快のために
人殺し等の重大犯罪に走り、一生を台無しにする
人は、利己主義者にあらず。利むかつき主義者である。
自分を全体として受入れろ。
自分を、肯定される部分と、否定される部分とに
分けるのは誤り。
著者は「オヤジ」に象徴される、日本流忍耐主義を批判。
そんな身体に有害なことをしてどうする。
著者の場合は、不快な対人関係に居ると、
身体症状(発疹)が出るから、そぐにそこから逃げる。
日本流「ガマン」の思想は、本来、自慢と同様
に、自己主張を意味した「我慢」の概念を、
逆の意味に、自分に内攻すること、自己抑制に変換した。
著者はこの思想に賛同せず。
日本流共同体主義「ガマン」主義は不自然。
親子関係でも無理な「ガマン」を止めて、
うまく親離れ子離れするのが良い。
▼向上や成功に懐疑を持つ著者は、女権主義が、無理な、
一部の例外の、殆ど超人
にのみ可能な成功物語をもてはやしたことを批判。
仕事、家庭、育児のあらゆる面でうまくやる
理想像が提示されたけれど、それは実現ほぼ不可能。
本家USAの女権主義は、男女比が極端に崩れた、
殆ど男ばかりの開拓民集団を背景にした特殊なもの。
それを外国、日本が真似するのは無理だ。
米開拓民の大半は女にありつけず、あぶれ者になり、
女が嫌になる。
USA西部劇は、あぶれ男を慰めるために作られた。
女は人(男)を見る目が無い、駄目な生き物だ。
女との関係よりも、男同士の友情が重要だ。
その様な男権主義への反作用として、USA Feminismが
生れた。
▼著者は、Feminismが主張する奪還論を批判。
旧来型社会で、男がほぼ独占した権力等のものを、
女も持つ、奪還する、とFeminismが主張するのは、
権力を良きものとする男権主義の価値観に屈服
すること。女の敗北。女がすたる。
女子管理職の弱点は、会社のため、よりも自分
のため、を優先させるので、賄賂を受取り易いこと。
著者は、敗者に心の傷を残す競争原理への懐疑を表明。
社会の中に心の傷を持つ人を多く作り出すことは不健全。
そんなものを世界標準として有難がることは無い。
仕事で重要なのは、communication,交換。
1970年代以降、明治、大正世代が世を去り、
日本からRiskの意味や、本当のbusinessの
意味を知る人が消滅したので、日本が駄目化した。